割り切り

テレビからは、人気の刑事ドラマが流れていて、その子は缶チューハイを飲みながら画面に見入っていた。
割り切りで契約した彼女は、会った時からけだるそうな雰囲気だった。
正直、美人ではない。体つきもどことなくだらしない。そのまま自分の部屋から出てきたようなダボダボのジャージ姿だ。
もし、風俗店で彼女が出てきたら、チェンジしていてもおかしくない。しかし、キャンセルはできてもチェンジできないのが割り切りだ。
僕は、仕方なく彼女と一夜を共にする決意を固めた。まあ、案外と気と体は合うかもしれないし。
彼女の勧めで、あるホテルの一室に入ると、彼女は勝手知ったるように冷蔵庫から缶チューハイを取り出して、テレビをつけた。
「このドラマ、終わってからでいい?」なんて、言ってくる。
夜の暗がりではよくわからなかったが、こうして明るいところで彼女を見ると、何で僕は、こんな女と金を払って寝なきゃならないんだ?と思い始めていた。
仕方なく、風呂を沸かす。一夜限りの関係だ、ここは我慢、と僕は浴槽につかりながら、自分に言い聞かせる。
ワリキリは売春なのか
風呂から上がってくると、彼女は3本目の缶チューハイを口にしていた。
そして「煙草買ってきて」と言う。フロントに内線すると煙草を持ってきてくれるそうだ。
僕は、部屋まで届けてくれたおじさんに頭を下げると、受け取った煙草を彼女に渡した。
彼女は、ありがとうの一言もなく、さもあたりまえのように煙草を喫い始めた。
僕は、やるせない気持ちになりながら、彼女の横に座って、同じようにテレビを見た。
ドラマはクライマックスで、刑事が犯人を追い詰めているところだった。もうすぐドラマも終わる。
その後、僕はこのジャージ女とセックスをすることになる。それが果たして自分が望んでいたものなのだろうか。
ようやくドラマが終わると、彼女は僕におもむろに手を差し出してきた。
「先にお金貰える?」
財布から抜き出した万札を渡しながら、僕には、割り切りなのだけど、割り切れない思いが付きまとっていた。
パトロンの意味
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